【徹底解説】インサイドセールス、フィールドセールスとカスタマーサクセスの違いは?

「近年の分業化されたセールスプロセスを詳しく知りたい」
「インサイドセールスとフィールドセールス、カスタマーサクセスの違いが分からない」
このようなお悩みを抱えていませんか?
従来「営業」とひとくくりにされていたセールスプロセスを、マーケティング・インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセスの4つの分野に分業化する企業が増えてきました。しかしそれぞれの役割がどう違うのか、またそもそも分業することにはどんなメリットがあるのか分からないままでいる人も少なくないようです。
そこで今回は、そもそもセールスプロセスの分業化が進んだ背景を解説したあとに、比較的新しい分野であるインサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセスの役割と導入事例を紹介します。
|セールスプロセスの分業化が進んだ背景
2000年を過ぎ通信インフラの整備が進み、インターネットが急速に普及・発達したことにより、BtoBにおいても顧客の購買行動は大きく変化しました。これまで製品やサービスを導入するときには営業と接点を持ち、時間をかけて比較・検討を進めて稟議にかけ、最終的に購入を決めるのが一般的でした。
しかし近年は、営業にコンタクトがある段階ではすでにインターネットで情報を集め、ある程度比較・検討が終わっていることが珍しくありません。そのため企業はできるだけ早く顧客と接点を持ち、リードを獲得することが求められるようになりました。
それにともない、企業のセールスプロセスも変化してきました。従来の営業手法においては、商談相手を探して提案し、受注に至るまで、顧客1社との接点すべてを1人のセールスパーソンが担当するのが一般的です。
しかし顧客の購買行動がデジタルシフトしたことにより、企業もおのずとインターネット上に情報を提供して集客する「インバウンド型」の営業手法を取らざるを得なくなりました。そのため営業からマーケティングを切り分ける企業が増えたのが、分業化の始まりです。
現在は下図のように、マーケティングと分かれた営業はさらにインサイドセールスとフィールドセールスに分かれています。なおかつ継続利用によってのみ収益化するSaaSを筆頭とするサブスクリプション型ビジネスモデルにおいては、顧客の成功に向けて伴走支援する部門として分業化されたカスタマーサクセスも重要な役割を担うようになりました。
次章では分業化された分野のうち、比較的新しいインサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスがそれぞれどのような役割を果たしているのかを詳しく解説します。
|インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセスの役割
ここでは比較的新しい分野であるインサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセスが、分業化されたセールスプロセスのなかで果たす役割を解説します。
■インサイドセールスとは?
インサイドセールスは、マーケティング部門が獲得したリードを取りこぼさないよう、「ホットリード(確度の高い見込み客)」に育ててフィールドセールスに引き渡す役割を担います。
フィールドセールスは売上を立てるのが命題であるため、どうしてもコンバージョンに近い顧客を優先しがちです。そのためマーケティング部門からパスされたリードを育てるためにリソースを割けず、取りこぼすケースが少なくありません。マーケティングとフィールドセールスの間に生じるギャップを埋める目的で生まれたのがインサイドセールスです。
インサイドセールスは、その名のとおり顧客に対して訪問営業はせず、基本的にはオフィス内で架電やメールなどを用いて営業活動をおこないます。移動にかける時間やコストが不要になるため、営業効率が高いことがインサイドセールスの特徴です。
インサイドセールスがあると、リードの取りこぼしがなくなること以外にも、確度を高めたうえでフィールドセールスに引き渡せるため商談の成約率が高まることもメリットです。
■フィールドセールスとは?
フィールドセールスは、インサイドセールスからパスされたホットリードを商談化し、受注までつなげるのが役割です。「フィールド」と呼ばれるとおり、実際にフィールド(社外)に出て、訪問営業をおこないます。
フィールドセールスでは、自社の製品やサービスへの興味・関心が高まったホットリードに対し、自社プロダクトで課題解決ができると気付いてもらうことからスタートします。そして競合他社と差別化することで稟議を上げてもらい、最終的に契約につなげます。
営業プロセスを分業化しフィールドセールスを独立させると、製品やサービスの魅力を伝えたうえで顧客の疑問点を解消し、契約までの不安を払しょくすることで、成約率を高められるのがメリットです。
■カスタマーサクセスとは?
カスタマーサクセスは、フィールドセールスが契約に結びつけた顧客に対し、製品やサービスを活用することで課題を解決するという「成功体験」を与え、継続利用してもらうために伴走支援するのが役割です。
サブスクリプション型ビジネスモデルにおいては、顧客が契約した時点ではCAC(Customer Acquisition Cost=顧客獲得単価)がLTV(Life Time Value=顧客生涯価値)を上回っているのが一般的です。そのためどれだけマーケティング、インサイドセールス、フィールドセールスが努力して契約につなげても、すぐに解約されてしまうと利益は出ません。
顧客に長く継続利用してもらうには、製品やサービスの価値を感じてもらう必要があります。そのため顧客を成功に導くべく伴走支援するカスタマーサクセスは、とても重要な役割を果たします。カスタマーサクセスに成功すると、顧客ロイヤルティが高まり、アップセルやクロスセルも期待でき、事業を安定的・継続的に成長させていけるのです。
|分業化のメリットとデメリット
かつては営業がすべて担っていた営業プロセスを分業することには、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?
■メリット
営業プロセスを分業化することには、3つのメリットがあります。
生産性・専門性が高まる
プロセスを分業化すると、毎日同じ業務を同じリズムで繰り返せるので生産性が高まります。たとえば従来の営業スタイルでは、営業マンはある日は顧客開拓で架電に明け暮れ、その翌日には顧客企業を訪問し、別の日には既存顧客の話を聞くといったように、まったく異なる内容・目的の業務をこなさなければなりません。
その点営業プロセスを分業化すると、毎日同じような業務を繰り返すので慣れが生じ、効率がよくなります。さらに架電営業なら電話でのトークが、対面営業ならプレゼン力、カスタマーサクセスなら顧客データの分析能力と、それぞれ特定のスキルが向上していきます。業務に対する専門性が高くなるため、結果的に成約率や継続率も高まっていくのです。
課題を可視化しやすくなる
分業化してそれぞれKPIを設定することで、課題を可視化しやすくなるのもメリットです。部門ごとにどの数値が悪いのか、どこにギャップが生じているのかが分かれば、営業プロセスの何がボトルネックになっているのかを把握できるため、改善を進めやすくなります。
たとえばインサイドセールスからフィールドセールスにパスするホットリード数は多いのに、フィールドセールスで成約されていないことは少なくありません。その場合、インサイドセールスがホットリードとみなした顧客は、フィールドセールスが期待したレベルまでニーズが十分顕在化していなかった可能性があります。またカスタマーサクセスでオンボーディング率が悪ければ、フィールドセールスの提案内容が過大で顧客の期待値を裏切っていることが考えられます。
それぞれの分野で生じた課題を互いにフィードバックしあい改善すれば、成約率や継続率を高めていけるのです。
リード創出や契約の継続にも注力できる
営業プロセスを分業化すると、継続的なリード創出や、契約の維持にも注力できるようになるのもメリットです。
営業部門では、契約を取り、売上を上げることが最終目標となるため、まだ興味・関心が育っていないリードを見つけて育成する施策には力を入れにくくなります。どうしても新規顧客の開拓よりも今すぐ客に注視してしまうためです。またいったん契約を結び手が離れると、そのあと契約を維持する働きかけには関心が薄くなりがちです。
しかし先述したとおり、デジタル化が進んだ今はできるだけ早く顧客と接触しなければ機会を逸してしまいます。分業化し、マーケティングやインサイドセールスがリード創出部分を担ってくれれば、営業部門全体として継続的にリードを獲得できます。
また契約後もカスタマーサクセスが伴走支援すれば継続率が上がり、結果的に企業の業績向上につながります。
■デメリット
営業プロセスを分業化するデメリットは、以下の2つです。
チームの目標を達成することだけを優先してしまう
営業プロセスを分業化すると、それぞれに設定された目標を達成することだけを優先しがちになることがデメリットです。
たとえばインサイドセールスは、フィールドセールスにパスするホットリード数をクリアするために、引き渡す顧客のしきい値を低く設定しがちです。確度の低い顧客を渡されたフィールドセールスは、自分たちの契約数を達成するためにそういった顧客を軽視してしまいます。またフィールドセールスが「契約」という自分たちの目標を果たしたあとの顧客の維持に関心が低く、適切に情報共有してくれなければ、カスタマーサクセスはうまくいきません。
分業化した場合でも、最終的な「企業の成長」というゴールを共有し、互いにサポートしあう体制作りが必要です。
担当間の認識のズレが発生しやすい
営業プロセスが分業化され、互いに自分たちの業務や成績にしか関心がなくなると、部署間の認識のズレによる不協和音が発生しやすくなることもデメリットです。
たとえば「ホットリード」に対するインサイドセールスとフィールドセールスの認識が違うと、インサイドセールスがパスしたリードがフィールドセールスでは放置されてしまう可能性があります。
また契約した顧客に対するアップセル・クロスセルは、カスタマーサクセスとフィールドセールスのどちらが担当するのかが明確になっていないと、互いに業務を押し付けあうことにもなりかねません。
このような問題を発生させないためにも、営業プロセスを分業化するなら、適正に業務を切り分けたうえでどの部署がどの業務を担当するのか、明確にしておくことが重要です。
|3つの分野の違いは?
それでは最後に、インサイドセールスとフィールドセールス、そしてカスタマーサクセスの違いを、以下の3つの項目ごとに一覧で確認しておきましょう。
インサイドセールス |
フィールドセールス |
カスタマーサクセス |
|
ミッション |
マーケティングからパスされたリードをホットリードに育て上げ、ベストなタイミングでフィールドセールスに引き渡す |
インサイドセールスからパスされた顧客に自社プロダクトの価値を伝え、クロージングする |
フィールドセールが契約に結びつけた顧客の成功を伴走支援し継続させ、LTVを最大化させる |
業務内容 |
・架電などによるリードの発掘 ・MAなどによるリードの管理・スコアリング ・メールマーケティングなどによるリードのナーチャリング |
・リードに対する適切な製品やプランの提案 ・クロージング ・契約 |
・オンボーディング ・ヘルススコア管理によるチャーンの阻止 ・顧客満足度向上 ・アップセルクロスセルの働きかけ |
KPI |
・架電数 ・アポ数 ・商談化数 など |
・商談数/受注数 ・訪問件数 ・見積書提出件数 ・成約率 ・受注額 など |
・チャーンレート(解約率) ・LTV ・アップセル・クロスセル ・オンボーディング率 ・契約更新数 など |
このように、インサイドセールスとフィールドセールス、そしてカスタマーサクセスはそれぞれ別々のKPIを持ち、与えられたミッションをコンプリートするために別々の業務をおこなっています。マーケティングファネルに従い一方的に流れていくため、それぞれの関係性は分断しがちです。
けれども最終的に達成しなければならないKGIは、「2021年度末に利益額○億円」など企業全体で定めたものであるはずです。それぞれのKPIを達成することは、最終目標であるKGIを達成するためであるとの共通認識を持つことが大切です。
そのために重要な役割を果たすのがカスタマーサクセスです。カスタマーサクセスが日々顧客と接するなかで得た情報を、開発部門や営業部門にフィードバックすることで、それぞれの業務がつながっていることを体感的に理解できるようになります。
営業が提案した内容が顧客の期待値を過大に高めていないか、顧客満足度を高めるためにどのような取り組みが必要かなど、カスタマーサクセスが全社的な視点を持ち、各部署に協力を求め協業していくといいでしょう。