リテンションレートとは?算出方法や重視される理由、向上させる方法を解説

今あなたは、カスタマーサクセス業務の効果を客観的に見るときに必要とされる「リテンションレート」について知りたいと思っていませんか?
・リテンションレートとは何?
・どのように計算し、対処に役立てるの?
カスタマーサクセスは「顧客の満足を引き出し、解約リスクを減らす」ためのものですが、施策が正しいのかどうかを的確に判断するための指標(数字)を得て、そこから推測することはとても大切です。
今回は、
・リテンションの意味
・リテンションレートの計算方法
・「リテンションレート」の類義語とその意味
について紹介します。
カスタマーサクセス業務を成功させられるよう、少し時間をつくって最後まで読んでください。
|リテンションレートとは?
リテンションレートとは、「定着率(継続率)」を指すことばで、「既存顧客維持率」とも呼ばれます。
ここでは、カスタマーサクセスにおいて、リテンションレートを重視しなければならない理由をご説明します。
■リテンションの意味
リテンションとは、直訳すると「維持」「保持」です。
これを転じて、マーケティングやSaaS業界で使われる「リテンション」は、「顧客の維持」を指す表現となりました。
顧客の保持(維持)は、顧客との良好な関係を保つこと、サービスを通して顧客に成功体験を提供することで実現します。
つまり、リテンションは、カスタマーサクセスが成功しているか否か、を表すものでもあるのです。
■リテンションレートの意味
リテンションレートはカスタマーサクセスの指標の一つで、「リテンション率」「定着率」や「継続率」と言われることもあります。リテンションレートでは「顧客にサクセス(課題の解決)を届けられているか」を表す数値でもあるため、カスタマーサクセスのKPIとして設定している企業もあります。
新規ユーザーの獲得はとても大事ですが、すぐ解約されてしまっては意味がありません。
特にSaaSの場合、ユーザーの定着率はとても重要です。
そのため、カスタマーサクセスにおいてはリテンションレートを重視するのです。
■リテンションレートの算出方法
では、リテンションレートはどうやって導き出すのでしょう。
簡易的にリテンションレートを計算するには、次の式を用います。
・特定の期間中の継続利用者数÷特定の期間中の新規契約者数
※リテンションレート計測に使う「特定の期間」(継続利用者数/新規契約者数)は同じもの
具体的には、1カ月間の新規契約者数が200、同じ期間を経過してもなお契約が続いている利用者数が120の場合、次のように計算します。
・120÷200=0.6
つまり、リテンション率は60%とわかります。
|BtoBのSaaSでリテンションレートが重視される理由
リテンションレートに注目したい理由を端的にまとめると、次のとおりです。
・LTVの向上
・CAC(顧客獲得単価)の抑制
上でも少し触れたとおり、リテンションレートはSaaSモデルにとってとても重要です。 特にBtoBの場合、単価が大きい分、「契約にたどり着くまでの時間やコストがかかる」「解約されてしまうとダメージが大きい」ので、リテンションレートは重視しなければならない要素なのです。
SaaSにおいては、LTVがCACを上回っていなければ、事業維持ができなくなります。
継続的な利用をしてもらわなければ、採算の取れる事業であり続けることはできません。
リテンションに注目すれば、「ユーザーが(平均的に)どの程度の間契約継続してくれるのか」と、「新規顧客を得るためにかける費用」とを冷静に比較でき、採算が取れているかがわかります。
さらに、顧客がどのような点を問題視し離脱していくのかを追求すれば、現在のサービス内容やサポートが適切かどうかがわかるようになるのです。
SaaSにおけるリテンション率は、35%程度あれば「成功」とされています。
|その他関連用語
では、カスタマーサクセスにおいて、他に注視したいことばとその意味をご紹介します。
意味の違いをきちんと理解しておけば、業務を進める中で混乱せず、的確な判断ができるようになるでしょう。
■チャーンレート
チャーンレートとは解約率を指すことばです。
単に解約(チャーン)といっても、次のように3つの視点でとらえることができます。
【カスタマーチャーンレート】
有料ユーザーのうち、どのくらいのユーザーが解約したかを見るもの
・カスタマーチャーンレート=(解約会員数÷解約前会員数)×100
【レベニューチャーンレート】
収益を見て、解約により生じた損失の割合を見るもの
・レベニューチャーンレート=(単価×解約した会員数÷総収益)×100
【ネガティブチャーン】
既存顧客から得た増加分収益(アップセル/クロスセル)と、解約に伴い減少した収益とを比較するもの
既存顧客がアップセル/クロスセルに応じて収益があがり、他のユーザーの解約に伴う減収を上回ること
ユーザー数で見るか、収益で見るかの違いはありますが、「リテンションが上手くいっていない場合、チャーンレートが上がる」「リテンションが成功すれば、ネガティブチャーンが生じるやすくなる」と理解しておくとよいでしょう。
■NRR
NRRは、Net Retention Rateの略です。
既存顧客の売上が前年と比べて維持できているかを示す指標で「売上継続率」や「売上維持率」とも呼ばれます。
NRRが100%を超えている場合、新規顧客を獲得しなくても売上は増加し、100%未満の場合、新規顧客を獲得しなければ、売上は縮小していきます。サービスの成長率を図ることができるため、NRRはベンチャーキャピタルでも非常に注目される指標です。
なお、NRRの計算方法は次のとおりです。
・NRR=(ベースとなる月額利用料金+アップグレードなどによるMRR-ダウングレードによるMRR-解約によるMRR)÷MRR
※MRR=月次経常収益のこと。初期費用を除いた「基本的利用料金」や「オプションなど」の増加額を含む金額を指す
|BtoBのSaaSベンダーがリテンションレートを向上させるには?
では、BtoBのサービスを提供している企業がリテンションレートを上げていくためには、どのような施策が必要なのでしょうか。
大きくは、以下の3つのポイントに留意します。
■1.ユーザーの課題を把握しておく
まず、ベンダーはユーザーの課題を理解することが大切です。
ユーザーがSaaSサービスを利用する目的は「課題解決」で、そのために契約し、費用を支払います。課題の解消ができなければ、解約につながります。
また、課題により設定を含む運用方法は異なりますので、より効率の良い利用方法を示すなど、しっかりサポートしなければならないでしょう。
特に契約規模の大きなハイタッチ層の顧客に対しては、「課題」と「契約サービスを利用したときに得られる効果」をきちんと共有し、長期的に伴走する体制を整える必要があります。
テックタッチ層にも、課題解消の効果をより感じてもらうために、サポートは必要です。
テックタッチ層に対しては、ユーザーの課題の全体像をとらえ、その解消に向けたFAQの準備といった手立てを打つ必要があります。
■2.オンボーディングを短い期間で成功させる
短期間で契約からオンボーディングが完了できれば、BtoBのSaaSは解約されにくくなります。
サービスを実際に活用するユーザーが早めに「満足な経験」をすれば、手放せないツールとなるからです。
また、新しいツールの導入は、顧客側の導入担当者にも負荷をかけますので、素早いオンボーディングはとても大切な視点です。
課題の洗い出しやそれを解消するためのテスト運用、設定、運用ルール規定といった、「契約前」にすべき事柄には、かなりの労力が必要で、契約企業内の担当者の熱意も必要ですので、できるだけスピーディーにオンボーディングを完了させなければならないでしょう。
ときに、担当者の異動や退職といったこともままあり、「契約したはいいけれど、使いこなせないまま解約に至る」というケースもないとはいえません。
短期間でのオンボーディング完了を目指すことも、リテンションレート向上にとても重要なことなのです。
■3.定期的にユーザーの状況を把握する
BtoB向けのSaaSサービスを提供するベンダーは、ユーザーの利用状況を定期的にチェックし、異変を早めにキャッチする必要があります。
「ログインしているか」「課題解決に必要な機能を使っているか」は、特に大切なポイントです。
ログインした形跡が見当たらないようなら、すぐにアクションを起こしてください。
重要な機能の利用頻度が低下しているのなら、課題解決から遠のいている可能性がありますので、サポートに動く必要があります。
逆に、利用方法が変わっている場合、「課題が変化している」ことも考えられますので、企業(ユーザー)は継続的な手助けが必要、課題に応じた運用方法の提案が必要、と想定できます。
また、一番多く利用するいわゆる「チャンピオン」の動向にも注目してください。
メインユーザーがサービスを利用していない場合、サービスの社内浸透の可能性は低下し、課題解決できなくなり、解約につながる可能性が高まります。
異動や退職によりチャンピオンの利用がなくなった場合、早急に後任者にサービス利用を継続する意味や利用方法を説明する必要があります。
このように、BtoBのSaaSの場合、利用状況をつぶさに観察することが大切です。
|まとめ
事業やサービスを維持するためには、チャーンの兆候を察知するのと同等ともいえる「リテンション」にも意識を向けなければなりません。
リテンションに関する知識を深めると同時に、「カスタマーチャーンレート」「レベニューチャーンレート」「NRR」についてもしっかり理解すれば、解約の兆候に対しどう対処すべきかが見えてくることでしょう。
カスタマーサクセスを推進するうえで、サービス提供から得られる「収益の全体像」を見るための指標の理解は、とても大切なことです。