【保存版】オンボーディングとは?SaaSのカスタマーサクセスにおける解約防止戦略

「SaaSでオンボーディングが注目されているのはなぜ?」
「オンボーディングをどう進めればいいのか知りたい」
このようにお考えではないでしょうか?
SaaS企業において、解約防止に貢献するとされ注目を集めているのがオンボーディングです。しかしオンボーディングを実施すると、なぜ解約防止につながるのか、仕組みをよく理解できていない人もいるようです。
そこで今回は、オンボーディングの概要やSaaS業界で注目を集めている理由、そして導入に向けての設計方法まで解説します。解約率を下げる方法を模索している企業の担当者の方は、ぜひご参考にしてください。
|オンボーディングとは?
もともとオンボーディングとは、「船や飛行機に乗っている」ことを意味する「on-board」から派生した言葉で、新たに採用した人材の「定着化」「早期戦力化」などを目指し、組織全体として取り組むプログラムを指します。
転じてSaaS業界においては、利用を開始したばかりの顧客に「このまま使い続けたい」と感じてもらい、継続を促す取り組みがオンボーディングと呼ばれるようになりました。
|SaaS業界で注目が集まるオンボーディングの効果
近年SaaS業界でオンボーディングが注目を集めているのには、以下の3つの理由があります。
・継続的な利用が増える
・アップセル・クロスセルの基盤となる
・サービスの本質を感じてもらえる
順番に解説します。
■継続的な利用が増える
SaaSにおいては、顧客に継続してもらうことによってのみ経営が成り立ちます。SaaSをはじめとするサブスクリプション型ビジネスでは、顧客を獲得した時点では顧客のLTV(Life Time Value=顧客生涯価値)がCAC(Customer Acquisition Cost=顧客獲得単価)を超えることがなく、早期解約されると赤字となってしまうためです。
しかし、導入の段階で使い方がよくわからなかったりうまく活用できなかったりすると、顧客の運用意欲は低下してしまい継続利用は見込めません。簡単に解約できることもまた、SaaSの特徴であるためです。
そこでオンボーディングを実施し、顧客の導入をサポートして「使いやすい」「便利だな」と感じてもらうことが重要になります。ストレスなくプロダクトを活用してもらい、「使い続けたら目標を達成できそう」と思ってもらうオンボーディングは、顧客の継続利用を促すには欠かせない取り組みなのです。
■アップセル・クロスセルの基盤となる
アップセルとは、現在よりもより高額なプランにアップグレードしてもらうこと、クロスセルとは、現在のプランと一緒に別のサービスやプロダクトをあわせて購入してもらうことを指します。アップセル・クロスセルに成功すると顧客単価が上がることから、SaaSにおいては顧客のLTVを向上させるためには欠かせない重要な取り組みです。
オンボーディングに成功し、顧客が自社プロダクトに価値を感じると「もっと便利に使いたい」と思ってもらえる可能性が高くなります。顧客の意欲が高まっている状態でアップセル・クロスセルを提案すると、受け入れてもらいやすくなるのです。
■サービスの本質を感じてもらえる
オンボーディングによる支援をしないでいると、顧客は自分に必要な機能を見つけられずに「このプロダクトは自社の役に立たない」と判断したり、「使うのが難しい」「面倒くさい」と感じたりしてしまうかもしれません。そのような事態を避けるために、オンボーディングは重要です。
顧客は「サービスを使いたい」のではなく、「サービスを使うことで自社の課題を解決したい」から導入を決断しているはずです。そのためオンボーディングを実施して、使い方や活用方法、顧客の課題解決に役立つ機能を紹介しましょう。そうすることで、サービスの本質や活用するメリットを、短時間で感じてもらいやすくなります。
|オンボーディングの設計方法
オンボーディングを設計するときには、次の4つのステップで進めます。
1)導入から活用までのフローを整理する
2)顧客アプローチの手法を決める
3)オンボーディングの目標とKPIを設定する
4)PDCAを回して改善していく
順番に解説します。
■導入から活用までのフローを整理する
まずは、顧客が自社のサービスを導入してからどのように活用し、目標や目的を達成するのか、一連の流れを整理します。実際に顧客の視点でサービスを利用して、成功までにどんなステップを踏むのかを可視化しましょう。
■顧客アプローチの手法を決める
フローを整理できたら、顧客アプローチの手法を決めていきます。オンボーディングは、顧客を売上規模で3つに分類し、次のようにアプローチ方法を変えるのが一般的です。
分類 |
顧客層 |
アプローチ方法 |
ハイタッチ |
大口顧客 |
訪問での導入支援や定例会議・社内勉強会の開催など個別での手厚いアプローチ |
ロータッチ |
契約数がハイタッチ客ほど高くない顧客 |
ユーザーを集めてのワークショップや他社での活用事例を伝える社外勉強会の開催など集団的なアプローチ |
テックタッチ |
契約数が少ないものの数が多い顧客 |
動画やチュートリアルを使う、プッシュ型通知を送るなど、テクノロジーを活用して自動化したコストをかけないアプローチ |
■オンボーディングの目標とKPIを設定する
顧客のアプローチ方法を決めたら、どの状態をオンボーディング完了とするのか、目標を定義したうえで、オンボーディング完了率(期間内に特定の工程を終えたユーザーの割合)をKPIとして定めます。
オンボーディングの目標は、事業や提供しているサービスの内容によって異なります。
<オンボーディングの目標の例>
・1か月以内に必要な機能の設定がすべて完了している
・2か月以内にユーザーが10人以上追加され、アクティブユーザーが3人以上いる
オンボーディングの目標が達成されたらオンボーディング完了とみなし、「オンボーディングを完了した企業÷オンボーディング期間の全企業」でオンボーディング完了率を算出します。
■PDCAを回して改善していく
オンボーディングの目標とKPIとする具体的なオンボーディング完了率を定めたら、実際に運用を開始します。
オンボーディング完了率が低ければオンボーディングは成功しておらず、サービスの解約リスクが高いことがわかります。オンボーディングで利用方法や価値が伝わらなかった顧客に、その後もサービスを積極的に活用してもらうのはかなり困難であるためです。
KPIを達成できなかった場合にはその原因を考え、ボトルネックとなっているのは何なのかを洗い出しましょう。オンボーディングを成功させるには、PDCAを回転させて改善を進めることが大切です。
詳しくオンボーディングについて知りたい方にはあわせてこちらの無料ホワイトペーパーをおすすめします:
>>カスタマーサクセスを軌道に乗せるオンボーディング運用準備ガイド
|SaaS企業のオンボーディング実施方法3選
ここからは、実際にオンボーディングを実施している3社の事例をご紹介します。
■【ハイタッチ】pottosの場合
弊社pottosでは、BtoBのカスタマーサクセスオートメーションツールを提供し、顧客にハイタッチなオンボーディングを実施しています。
カスタマーサクセスツールの導入を決めた企業は、さまざまな課題を抱えています。そのため初日オンボーディング打ち合わせでは、ツール導入の目標を定義し、その目標を達成するための適切な設定や運用方法、設計を考えます。
顧客の状況や要望に応じたオンボーディングの流れを作ることにはいくつかポイントがあります。
・ツール導入目標の明確化
導入後にはすべての機能を使いたくなり、もともと目指していた目標を忘れやすくなるものです。そのため最初にツールの導入目標を明確化しておく必要があります。
・提供側と顧客側のタスク期限の設定
タスク期限を設定することで、目標達成するために提供側と顧客側が「何を」「いつまでに」行えばいいのかが明確になり、オンボーディング期間中にツールのセットアップを諦めてしまうのを防げます。
・徹底的なサポート
カスタマーサクセス担当者は、オンボーディング期間中にツールの設定方法などについて不明なことが多数発生します。そのようなときには、pottosのオンボーディングチャットサポートや打ち合わせですぐ対応しています。
このように、弊社ではオンボーディングに際し、一緒に策定した目標にあわせた計画を設計したうえで、定期的に会議をしながらツールのセットアップを行っています。初期設定が完成したらオンボーディングが完了し、自分で操作できるようになった顧客はアダプションステージに入ります。
■【ロータッチ】KARTEの場合
KARTEは小売業から金融・保険、クラウドサービスなど、多種多様な業種のオンラインでの「顧客体験」を可視化するツールです。
KARTEは自社サービスの導入企業に対し、個別対応・セミナー形式を織り交ぜたロータッチにてオンボーディングを提供しています。
導入企業には、まずKARTE Kickoffと呼ばれる取り組みたい施策を実現するための個別形式のプログラムを実施。KARTEの運用体制や導入サイトのゴール、KPIなどを確認し、取り組む施策に応じたタグ設定の詳細などを案内します。
その後は KARTEで施策を配信するための基本機能をセミナー形式で学び、施策を実配信したあと1.5か月程度で返りのセミナーを受け今後の運用を設計します。施策のブラッシュアップには、個別形式での対応も実施。PDCAを回転させ、導入から3か月を程度でのオンボーディング卒業を目指します。
【参考】「KARTEオンボーディングプログラムの全体像」KARTE SUPPORT
■|【テックタッチ】Slackの場合
Slackは、チャットツールのひとつです。そもそも自社で利用するために開発したものを公開、するとその使い勝手のよさからどんどんシェアを伸ばし、今ではSlackを導入するためのコンサルティング会社が数々立ち上がるまでになっています。
Slackがここまでシェアを伸ばしたのは、
・ファイル共有サービス(BOXやDropbox、OneDrive、GoogleDriveなど)との連携
・Slackで個人宛に送られるメールを一括管理できる
といった他のチャットツールとは一線を画す機能を持っているうえ、
・ヘルプセンターの情報が充実している
点も大きく寄与しています。
チャットテキストの中に連携していないファイル共有サービスのURLが含まれている場合に「連携しますか?」「(連携しないを選んだとき)Google Driveファイルをインポートしませんし、もうお邪魔はしません。気が変わった場合には、アカウントの Integrations セクションから変更することができます」と現れるなど、事細かに“ケア”してくれます。
また、単に機能の面のみならず、テーマ(Slackアプリを立ち上げたときの色合い)のチョイスができることも人気となった理由でしょう。もちろん他のチャットアプリでもテーマの変更はできますが、Slackでは
・P型/D型色覚推奨
・T型色覚推奨
と、ユニバーサルデザインの面でも優れているのです。
普段使用しているツールとの連携が容易で、誰にでも使いやすいデザイン、これがSlack人気の要因でしょう。