LTVとCPAの比率はなぜ重要?計算方法や指標の関係性を解説

「LTVとCPAにはどのような関係があるの?」
「それぞれの計算方法を把握して、事業に役立てたい」
このようにお考えではないでしょうか。
SaaSビジネスを運営していくうえで、LTVの把握と評価は重要な業務評価手法のひとつとされています。CPAもまた、事業の収益にかかわる重要な指標です。両者を関連づけて考えると、より効果的な施策を立てられるようになります。
そこで今回は、LTVとCPAとは何なのか、計算方法や活用方法をご紹介します。LTVやCPAと関係深い、SaaS系ビジネスにおいて重要なユニットエコノミクスについてもあわせて解説しますので、ぜひご参考にしてください。
|CPAとは?
CPAとはCost Per Actionの略語で、「顧客獲得単価」を意味します。1人の顧客をコンバージョンさせるのに要した費用、なかでも広告費を指すのが一般的です。
コンバージョンの中身は「商品の購入」や「問い合わせ」、「資料請求」など、広告の目的により異なります。CPAを測定することで、広告の費用対効果を測れるようになります。CPAは、広告を運用する際に必ず計測すべき指標のひとつです。
■CPAの計算方法
CPAは、以下の計算式で算出されます。
CPA=広告費÷アクション数(コンバージョン数)
たとえば「資料請求」を目的に、20万円の予算でリスティング広告を配信したところ、4件の申し込みがありました。この場合、CPAは以下のように計算されます。
CPA=20万円(広告費)÷4件(コンバージョン数)=5万円
この広告のCPAは、5万円とわかりました。
|LTVとは?
LTVとはLife Time Valueの略語で、日本語では「顧客生涯価値」と訳されます。1人の顧客が生涯をとおして自社にもたらす利益の総額を指し、自社の収益と密接にかかわる重要な指標です。
とくに近年台頭しているサブスクリプション型ビジネスなど、顧客の継続利用によってのみ収益を得られる企業にとっては、LTVの向上が最重要課題ともいえるでしょう。
■LTVの計算方法
LTVには複数の計算方法があり、SaaSにおけるもっとも基本的な計算方法は以下となります。
LTV=ARPA(Average Revenue per Account=1顧客あたりの平均月単価)÷チャーンレート(解約率)
たとえばA社のARPAが5,000円、チャーンレートが2%だとすると、LTVは以下のように計算されます。
LTV=6,000円÷2%=300,000円
A社のLTVは300,000円と算出されました。
|LTVの活用方法
LTVは、「顧客層をセグメント化するとき」や「CPAの上限を把握したいとき」に活用できます。ここでは両場面において、どのようにLTVを活用するのかを解説します。
■顧客層をセグメント化する
顧客セグメントごとにLTVを算出することで、各顧客セグメントが自社にどの程度貢献しているのかを評価・比較できるようになります。
たとえば商品Aについて、「社員数50人以下の顧客」と「社員数50人超〜100人以下の顧客」で比較してみましょう。
顧客セグメント |
ARPA |
チャーンレート |
社員数50人以下の顧客 |
3,000円 |
1% |
社員数50人超〜100人以下の顧客 |
5,000円 |
2% |
それぞれのLTVを算出してみましょう。
社員数50人以下の顧のLTV=3,000円÷1%=300,000円
社員数50人超〜100人以下の顧客のLTV=5,000円÷2%=250,000円
LTVで比較すると、実は「社員数50人以下の顧客」のほうが、自社にもたらす利益が多いことがわかります。
このように、LTVは顧客セグメントの自社への貢献度を正確に把握するのに役立つのです。
■CPAの上限を把握する
LTVを算出すると、今後マーケティングしていくうえでのCPAの上限を把握できるようになります。
たとえば先ほどの例でいえば、「社員数50人以下の顧客」であれば300,000円、「社員数50人超〜100人以下の顧客」については250,000円以上のCPAをかけてしまうと、利益がでることはありません。つまりCPAは、LTVを上限とする必要があるのです。
|CPAとCACとLTVの関係性
CPAと似た言葉に、CACがあります。CACとは、Customer Acquisition Costの略語で、同じく「顧客獲得単価」と訳されます。CACの計算式は、以下のとおりです。
CAC=顧客獲得にかかるトータルコスト÷新規顧客獲得数
CPAが1件のコンバージョンを得るのにかかった広告コストを指すのに対し、CACは1人または1社の「顧客」を獲得するのにかかったコストを指します。
CPA |
1件の「コンバージョン」を獲得するのにかかる広告コスト |
CAC |
1人または1社の「顧客」を獲得するのにかかるすべてのコスト |
前章で「CPAはLTVを上限とする必要がある」と述べました。つまり「LTV/CPA>1」でなければ黒字化しないことを意味します。
しかし実際事業をおこなううえでは、顧客を獲得するのには営業の人件費やPR費など、広告費以外に多くの費用がかかります。
それらを加えたうえでLTVが黒字化しないと、自社の収益は生まれません。そのため事業が黒字化するためには、CPAではなくCACを用いて「LTV/CAC>1」となるよう施策を検討する必要があるのです。
この「LTV/CAC」で出された数値は、ユニットエコノミクスと呼ばれます。
|採算性を示す指標のユニットエコノミクス
「LTV/CAC」で算出されるユニットエコノミクスとは、事業の最小単位とされる1ユニットあたりの収益性を測定する指標とされます。
1ユニットをどう定めるかは事業により異なりますが、たとえばSaaSビジネスにおいては「1ユニット=1ユーザー」とするのが一般的です。
事業運営においては、CACがLTVを超えない限り、収益が発生することはありません。そのためCACはできるだけ早く回収する必要があります。
たとえば先ほどの「社員数50人以下の顧客」のLTVは以下のとおりでした。
LTV=3,000円÷1%=300,000円
この顧客に対するCACの上限は300,000円です。しかし実際にCACに300,000円かけていると、顧客と契約して20か月を過ぎるまでは何の利益も生みだしません。しかももしそれより前に解約されてしまうと赤字になります。
つまりLTV/CAC>1であれば黒字にはなるものの、1に近ければ近いほど収益性は薄く、事業運営は厳しいものとなるのです。
SaaSにおいて収益を確保し事業を拡大していくためには、
・LTV/CAC(ユニットエコノミクス)>3
・チャーンレート3%未満
・CAC/ARPA(CAC回収期間)<12か月
になるのが理想とされています。
|LTV/CACが3倍以上が理想な理由
とくにサブスク系SaaSにおいては、ユニットエコノミクスは3以上が理想とされています。その理由を考えてみましょう。
まずCAC回収期間「CAC/ARPA」を、以下のように変形します。
CAC/ARPA=CAC回収期間
CAC= CAC回収期間×ARPA
これをユニットエコノミクスの計算式に代入します。
ユニットエコノミクス=LTV/CAC=LTV/CAC回収期間×ARPA
LTV=ARPA÷チャーンレートなので、
ユニットエコノミクス=(ARPA÷チャーンレート)/CAC回収期間×ARPA
APRA | 1 | 1 | 1 | ||||
= | x | = | x | ||||
チャーンレート | CAC回収期間×ARPA | チャーンレート | CAC回収期間 |
となります。
1÷チャーンレートは平均継続期間であるため、
1 | 平均継続期間 | ||
ユニットエコノミクス=平均継続期間 × | = | ||
CAC回収期間 | CAC回収期間 |
と置き換えられます。
SaaSにおけるCAC回収期間の理想は12か月以内であることを考えると、
平均継続期間 | |
理想のユニットエコノミクス 3 = | |
CAC回収期間12か月 |
となり、平均継続期間=3×12か月=36か月となります。
平均継続期間が3か月なら、チャーンレートは1÷36でおよそ2.8%となり、SaaSにおいて理想とされる「チャーンレート3%未満」を満たします。
つまりSaaSにおける
・CAC回収期間12か月
・チャーンレート3%未満
の両方を満たすと、自動的に「LTV/CAC>3」が成立することから、
「ユニットエコノミクス(LTV/CAC)>3以上なら健全」であるといえるのです。
|LTV/CAC比率を上げるための施策
ユニットエコノミクス=LTV/CACの比率であることを考えると、LTV/CACの数値を高めるためには、
・LTVを向上させる
・CACを下げる
のいずれか、あるいは両方を実行すればよいとわかります。
LTVを向上させる
LTV=ARPA÷チャーンレートであるため、LTVを向上させるには「ARPAを高める」「チャーンレートを下げる」の2つの対策があるとわかります。
具体的には以下のような方法が考えられます。
・アップセル・クロスセルを実施して顧客単価を上げる
・適切なタイミングで働きかけて再購入・契約更新率を高める
・オンボーディングを徹底し、導入期の解約を防ぐ
・顧客ロイヤルティを高める
LTVを向上させるには、顧客の利用状況をモニタリングし、適切なタイミングでの働きかけが重要です。顧客数が多く手動での管理が難しい場合は、ツールを導入するなどテクノロジーを活用しましょう。
【目的別比較】2022年のカスタマーサクセスツール全社31選
【2022年最新調査】カスタマーサクセスツール32選を網羅。ツールごとに特徴や料金を紹介しています。また、目的別の比較表を掲載していますので、必要なカスタマーサクセスツールを選択できるでしょう。
CACを下げる
CAC=顧客獲得にかかるトータルコスト÷新規顧客獲得数であるため、CACを下げるには「顧客獲得にかかるコストを下げる」「新規顧客獲得数を増やす」以下のような取り組みが必要です。
・自然流入の新規顧客を増やす
・広告のCVRを上げる
CACを下げるには、CACの予算を減らすのがもっとも効果的です。しかし予算を減らすことにより、新規獲得顧客数が減れば本末転倒です。
そのため予算を抑えることを考えるより、自然流入が増える方法や出稿している広告の費用対効果を上げるためにCVRをあげることを考えましょう。