カスタマーサクセスのKPIはどこに設定すべき?

「カスタマーサクセス」とは顧客がサービスを通して成功(目的を達成)できるように、契約後に行う全ての活動や組織のことを言います。
今回は、そんなカスタマーサクセスのご担当者に必要な考え方や、顧客の成功体験に関して着目すべきポイントについてご説明します。 カスタマーサクセスに求められる事柄を網羅していますので、どうぞお役立ていただければ幸いです。
|1.結論!カスタマーサクセスでみるべきKPIは
カスタマーサクセスを追求するうえで重要なKPIは、次の3つです。
※KPI=Key Performance Indicatorの略。重要業績評価指標のこと
・解約率
・オンボーディング完了率
・アップセル/クロスセル率
特にサブスクリプション型ビジネスにおいて、この3点はとても重要です。
カスタマーサクセス担当者(CSM)が目指すことは、「LTV(Life Time Value)の最大化」です。
そしてLTVの最大化に向けて、「継続率向上」「単価向上」を目指します。
これらは顧客に長く使ってもらう、多く使ってもらうために欠かせない視点です。
では、上の3点はこの考え方にどう役立ってくれるのでしょう。 それぞれ細かく解説します。
■1-1.解約率
ユーザーが継続して利用してくれれば、それだけ安定的に収益が上がることは、すぐにでも想像がつくのではないでしょうか。サブスクリプション型のサービスで利益を上げるためには、新規顧客を増やしていくよりも、今契約している顧客の解約(チャーン)を防止することが重要です。
ここでは、なぜ、解約率を抑えることが重要なのか、その具体例を挙げて説明していきましょう。

たとえば、サービスの提供をして1年目は、新規顧客数=売上に直結します。
顧客が多ければ多いほど、客単価が上がれば上がるほど、全体の売上が上がるのです。
サービスの提供から2年目は、新規顧客に加えて、前年から契約を継続してくれている顧客の売上も積み上げられていきます。これが、サブスクリプションならではの構造です。
ここで具体的に数字を挙げて考えてみましょう。
ある企業のサービスは、毎年100件の新規顧客を獲得し、50%の継続率を維持しています。全体の契約数を数えると、1年目が100件、2年目が150件と増える構造です。3年目は、新規顧客100件、2年目の継続顧客が50件、3年目の継続顧客が25件となるため、全体の契約数は175件に増えます。
ただ、サブスクリプション方式のサービスでは、年々継続率が上がっていくことも珍しくありません。
2年目の継続率は50%でも、3年目に入ると継続率は約80%以上になることが多々あるのです。もし、年々継続率が高まっていくと、全体の契約数にどのような変化があるのでしょうか。
(A)毎年の新規顧客数100件
(B)2年目の継続率50%
(C)3年目の継続率80%
(D)4年目の継続率90%
上記のような推移を示した場合、(A)100+(B)50+(C)40+(D)36=合計226件の契約数を得ることができます。この場合、サービスの提供から4年目で、継続顧客が新規顧客の数を上回る計算です。
新規顧客の数を増やすことだけでなく、継続顧客を維持する、つまり解約率を抑えることがどれだけ大切なことなのか、ご理解いただけたのではないでしょうか。
解約率を導く計算式には、次のふたつがあります。
・カスタマーチャーン=解約数÷契約してくれた顧客数
・レベニューチャーン=(単価×解約数)÷ 売上
カスタマーチャーンは、単純に顧客数からみた解約率です。
一方、レベニューチャーンは、売上額からみる解約率です。
サブスクリプション型ビジネスの場合、レベニューチャーン率を導き、売上にどう影響するかを知らなくてはなりません。顧客数確保も大事なことです。
ですが、売上額に関する数値にも注目しなければ、正しい判断材料を取りこぼすことになります。
解約率(チャーンレート)を抑えるコツについて詳しくは、「チャーンレートを下げるために必要な3つのポイント」でご紹介していますので、合わせてご参考にしてください。
■1-2.オンボーディング完了率
オンビーディングとは、顧客にサービスを理解してしてもらい、定着してもらう期間のことを指します。
「オンボーディングが完了した」状態は、主に「サービスの基本的な操作方法の理解や初期設定が完了し、運用が開始された」状態を示します。
具体的な状態は、企業により異なるため、以下は一例です。
・2か月以内に〇機能の設定まで全て完了していれば「オンボーディング完了」
・1か月以内に初期設定が完了し、新たなデータが作成されていれば「オンボーディング完了」
以上のように、社内で決めた定義を達成した場合に「オンボーディング完了」と見なし、
完了した企業 ÷ オンボーディング期間の全企業 でオンボーディング完了率を算出します。
そもそもなぜオンボーディング完了率を重視するのか?
それは、長期間オンボーディングが完了しない顧客は解約リスクが非常に高いからです。
オンボーディングが完了されないと言うことは、サービスが利用されていない、つまり「サービスが無くても問題ない状態」の為、不要なコストとして、解約されてしまう可能性が非常に大きいです。
契約してもらったのに、利用されずチャーンされてしまう、、 それは、顧客にとっても、営業にとっても、CSMにとってもよくありません。
そもそも、なぜそんなことが発生してしまうのか?
もちろん色々な理由がありますが、顧客によくある理由を以下にまとめました。
・導入作業を手の空いたタイミングでやろうと考えていたが、いざ始めようとした時に別件の対応で導入作業に手が回らなくなった。
・運用者と別の者(上司等)が導入を決定したが、運用者側で導入のメリットを感じていない。
・操作で不明点があったが、問い合わせるのが手間で、利用しなくなってしまった。
顧客が新たなサービスを導入する際、現状抱えている業務に追加で導入作業が上乗せされることも多く、対応を後回しにされてしまうことも少なくありません。
そんな問題を防止するには、顧客の導入意欲が高いうちに、できる限り短期間でオンボーディングを完了させてしまうことが重要です。
また、上記はハイタッチ対応ですが、ロータッチ・テックタッチ等には以下手法があります。
・チュートリアルの準備
・問い合わせ方法(チャンネル)を増やす
・顧客専用の掲示板を作る(ユーザー同士で便利な使い方の議論をしてもらう)
・ユーザー会を定期的に開催する
・必要に応じて訪問や架電、メールなどで注意を引く
顧客も人間なので、時間が経てば導入へのやる気の熱も冷めてきます。
契約直後やユーザー会直後など、やる気の熱が熱いうちにオンボーディングを進められる仕組みを用意しておくことが、オンボーディング完了率向上への重要なポイントとなります。
■1-3.アップセル/クロスセル率
提供しているサービスに複数のプランがある場合、アップセル率やクロスセル率にも注目しましょう。
アップセルとは、より単価の高いサービスを利用してもらうことを指します。
それに対し、クロスセルとは、契約している主なサービスと関連性の高いサービスを勧め、顧客ひとり当たりの単価を引き上げる方法です。
アップセルやクロスセルを狙うなら、
・特定の期間中に、より高いサービスに乗り換えたときに値引きする
・サービスを複数以上契約したときの割引を用意する
・アップセル/クロスセルしてくれた顧客に、保証期間の延長サービスを提供する といった方法が有効です。
しかし、むやみにアップセル/クロスセルの提案してはいけません。
顧客にとって、成功を届けることができないアップセル/クロスセルは、コストアップや複雑さのアップでしかなく、 解約リスクを上げてしまうことになるからです。
アップセル/クロスセルは、
・サービスの利用頻度が高い顧客に対してアップセル提案を行う
・他のサービスと関連性の高い機能をよく活用している顧客に対しクロスセル提案を行う
上記のような顧客1社1社にパーソナライズされた提案が重要となります。
|2.「カスタマーサポート」と「カスタマーサクセス」のKPIが異なる理由
カスタマーサポートとカスタマーサクセス部署は、設置される目的がそもそも違います。
カスタマーサクセスは顧客の成功を求めるのに対し、カスタマーサポートは顧客の満足度を上げることが目的ですので、KPI値の設定が異なるのは当然のことです。
■2-1.カスタマーサポートにおけるKPI

カスタマーサポートでは、お問合せやアンケートなどを用いて、顧客の悪い体験を改善することに努めます。事が起こってから対応にあたるため、アフターケア的な要素が強く、契約後の何らかのトラブルが発生したときだけ顧客と関わるのが特徴です。
設定したKPI値を満たしたかどうかを判断するタイミングは、カスタマーサポートにおいては「事後」です。
・ユーザーへの問い合わせにどれだけスピーディーに対応できたか
・1日ひとりあたり何人のユーザーの問題を解決できたか
・そのユーザーがオペレーターの対応に満足したかのアンケート
など、ユーザーとの接触が終わった後でしか結果を見定めることはできません。
■2.カスタマーサクセスにおけるKPI

カスタマーサクセスは顧客の声や利用状況などを元手に、顧客が経験する体験をよりよいものにしていくのが目的です。そのため、カスタマーサクセスでは契約前から積極的に関わっていき、顧客に働きかけていきます。
そのため、最初に述べたように
・解約率
・オンボーディング完了率
・アップセル/クロスセル率
などが、カスタマーサクセスにおけるKPIの設定項目となるのです。
カスタマーサクセスでのKPI設定は、契約前の時点、ないしはサービス利用期間更新前から始まるのが特徴です。
|まとめ
KPIの設定は、上記3つを参考に、それぞれの事業で必要なKPIを見つけ出すことが大切です。
また、実際にそのKPI値を設定していることが役に立っているのか、定期的に検証をし続けていくことも忘れないようにしましょう。

顧客利用状況の可視化をはじめ、利用状況に合わせた自動アプローチやカスタマーサクセス担当者のタスク管理はスプレッドシートなどで手動管理できますが、運用の工数と技術の限界は事業拡大の壁になるでしょう。
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