フリーミアムモデルのよくある失敗の原因5つ&事例3選を紹介

「フリーミアムモデルを採用したいけれども、失敗するのではと不安」
「失敗事例や失敗する原因を知ったうえで、フリーミアム戦略に取り組みたい」
このように考えてはいませんか?
近年、フリーミアムモデルを採用する企業が増えています。SlackやDropboxをはじめ多くの企業がフリーミアム戦略で成功しているのをみて、自社でも取り入れられないか検討している企業も多いでしょう。
しかし、フリーミアムモデルでビジネスを展開してみたものの、失敗した企業も少なくありません。失敗を防ぐためには、失敗事例からその原因をさぐり、反面教師とすることが大切です。
そこで今回は、フリーミアムモデルで失敗した3つの事例と、よくある失敗の原因を5つご紹介します。最後まで目を通していただけると、フリーミアム戦略で失敗する原因を理解し、未然に防げるようになるでしょう。
|フリーミアムモデルとは?
フリーミアムモデルとは、フリー(free=無料)とプレミアム(premium=プレミアム・割増)を組みあわせた造語です。フリーミアムモデルでは、基本的な機能が備わったプランを無料で提供し、割増料金を払うことによってのみより高度で便利な機能を使えるように設計します。
無料で導入できるようにして利用者の間口を広げ、サービスの利便性などを体感してもらったうえで、より高度な機能を求める顧客を上位プランへ移行させて利益を得るビジネスモデルです。
フリーミアムモデルは、無料ユーザーにサービスを提供するコストがほとんどかからない、デジタルサービスを提供している企業で多く採用されています。
|フリーミアムモデルの失敗事例3選
SlackやDropboxなど、フリーミアムモデルで成功している企業が多い一方、失敗している企業も少なくありません。まずは3社の失敗事例をご紹介します。
■PANDORA
PANDORAは、アメリカで人気のオンラインパーソナルラジオサービスです。PANDORAは当初、月間10時間まで視聴無料のサービスを提供し、それ以上は月額36ドルとするフリーミアムモデルでビジネスを展開していました。
しかし多くの利用者がいるにもかかわらず、想定よりも有料サービスに移行するユーザー数が少なかったため、PANDORAは戦略の見直しを迫られます。
PANDORAは最終的に無料プランを拡大し、有料プランではなく広告から収益を上げるビジネスモデルへ転換。フリーミアムモデルが機能せず、ほかのビジネスモデルへ転換することで成功した事例として知られています。
■New York Times Online
New York Timesは、オンラインで記事を配信するNew York Times Onlineと呼ばれるサービスを展開しています。サイトでは、当初20記事までを無料とし、21記事目から有料としていましたが、有料ユーザーがなかなか増えずにいました。
そこで無料で読める記事数を10本としたところ、会員数が急増します。その結果、現在では100万人以上の会員数を抱えるまでになりました。フリーミアムモデルでの無料と有料の線引きの難しさを物語る事例です。
■Chargify
Chargify LLCは、アメリカで支払請求管理ソフトを生産・販売する企業です。当初無料で請求書を送付できる企業を50社と設定したところ、有料の利用者数が伸びず、一時は破産寸前にまで追い込まれます。
これは利用社の多くが中小企業であったため、無料プランで十分事足りたことが原因です。無料プランと有料プランとで、機能面で差別化していなかったことも要因として挙げられています。
その後Chargifyは無料プランを全廃し、有料プランのみの提供にシフトしました。多くの企業はサービス自体には満足していたため順調に顧客が増え、黒字化に成功しています。フリーミアムモデルにおいて、ターゲットとする顧客のニーズを正確に把握すること、無料と有料で明確な差別化が重要なことがよくわかる事例です。
|フリーミアムモデルのよくある失敗原因5つ
フリーミアムモデルの失敗事例からは、失敗するのには一定の共通した原因があることがわかります。ここではフリーミアムモデルでよくある失敗原因を、5つにまとめました。
■1)無料では商品のバリューを掴むには十分でない
フリーミアムモデルでは、無料でサービスを提供するとそちらで満足してしまい、有料会員になってもらえないのではといった心配がつきまといます。そのため利用できる機能を大幅に制限してしまうケースがみられますが、そうすると失敗する可能性が高くなります。
無料プランでサービスの価値が十分に伝わらないと、ユーザーは有料プランへの期待が膨らまないためです。バージョンアップしても、たいして変わらないだろうと思われてしまうと、有料プランに転化してもらうのは難しくなるでしょう。
無料プランで十分な価値を感じてもらうためには、有料プランの顧客利用状況を分析し、まずはもっとも利用されている機能を提供します。そこから無料ユーザーと有料ユーザーの利用パターンのデータを蓄積・分析し、プラン間の利用制限や期間のバランスを取っていくと良いでしょう。
■2)有料化しなくても無料バージョンで十分満足してしまう
1)とは真逆に、利用できる範囲を広げすぎることも失敗に繋がります。有料プランに申し込まなくても、無料プランで十分満足し、課金する必要がないためです。
この問題をクリアするには、無料で使える機能の戦略的な選定が重要です。基本的には、以下のような機能やサービスに制限をかけることを検討すると良いでしょう。
<制限をかけると効果的な機能やサービス>
・中級者以上の機能
・ユーザー人数
・ある期間においての機能の利用回数
・データ容量
・カスタマーサポート
・広告フリーなサービス
どの機能をどの程度制限すればベストなのかは、サービスの特徴や使い方によって違います。顧客の利用パターンの分析を続けるうちに、無料プランで制限すべき機能やサービスを特定できるようになるでしょう。
また、顧客アンケートを実施して、もっとも大事な機能や有料化するべきオプションを調べるのもおすすめです。
■3)カスタマーサポートが不十分
無料プランのユーザーに対して十分なカスタマーサポートを提供しないことも、サービスの価値を感じられなくする原因の1つです。
提供しているサービスの内容や難易度によって違いますが、無料ユーザーがカスタマーサポートにまったく問い合わせられないようだと価値を実感できず、解約してしまう場合があります。そのため、無料ユーザーに対しても、最低限のカスタマーサポートを提供することが大切です。
とはいえ、社内では無料ユーザーと有料ユーザーの区別が必要になるのは否めません。費用対効果も考慮して、無料ユーザーにはチャットボットの自動サポートやFAQサイト、チュートリアル、Q&Aフォーラムなどを提供し、サポートの効率化を図りましょう。
■4)事業戦略の改善のためデータ収集をしない
フリーミアムモデルを採用しているにもかかわらず、データ収集をしなければ、成功は遠のきます。
フリーミアムモデルを採用するメリットの1つは、間口を広げることで多くの利用者を確保し、マーケティングや販売、および製品戦略を最適化するのに使用できるデータを多数集められることです。
見込み客が無料プランに申し込むと、年齢や性別などの属性、利用パターン、サポートの問題などに関する貴重なデータが得られるようになります。ユーザーのデータは、マーケティングの宣伝戦略などを改善し、販売戦略をより効果的なものにするのに役立ちます。データの分析に基づき製品を改善するなど、最適化していくこともできるでしょう。
さらに個々のユーザーに関するデータを詳細に分析すれば、個々によりカスタマイズされた提案ができるようになるため、アップセルの成功率を上げることも可能です。
■5)有料化するための十分な情報を提供しない
無料プランは、多くのユーザーに実際にサービスを体験するチャンスを与えます。 実際にプロダクトを使ってみることは、デモ動画やPRサイトを見るよりはるかに説得力があります。無料プランで十分価値を感じれば、有料プランに課金するユーザーが増えていくはずです。
しかし、有料プランでさらに何が得られるのかをきちんと伝えていないと、ユーザーに課金してもらえません。有料プランに申し込むとどんな機能が使えるようになり、どういったサポートを受けられるのか、メリットを明らかにしておきましょう。有料プランに転化することの費用対効果が、無料ユーザーにわかりやすく伝わる仕組みにしておくことが大切です。