カスタマーサクセスが失敗する6つの原因と成功に導くポイントを解説

カスタマーサクセス(CS)の担当者となった、もしくはカスタマーサクセスに取り組んでいる中で、あなたは今、次のような悩みに直面していませんか?
・CS活動がうまく進んでいない気がする
・CSを進めるうえで、より多くの成果を得たい
・CSにまつわる専門用語をより深く知りたい
今回は、このような悩みや疑問を解決するヒントを解説します。 数分割いて最後までお付き合いくだされば、カスタマーサクセスについてより深く知ることができ、明日からの活動の失敗を予防するために役立てることができます。
|カスタマーサクセスで失敗しやすい6つの原因
まず、カスタマーサクセスを進める中でつまづきを生じやすい6つの「原因」から見ていきましょう。 失敗の元となる事柄を知れば、それらを回避できます。
■1.オンボーディングでのスコープを広げすぎる
カスタマーサクセスの中でも重要なポイントはオンボーディングですが、あまりにもその範囲を広く設定しすぎると顧客をうまくリードできなくなってしまいます。 顧客が解決したい課題は、数多くあるでしょう。ですが、そのすべてをカバーするとなると、オンボーディングまでの道のりが遠のいてしまいます。 たとえば、次のような問題が浮上することが考えられます。
・スコープ(範囲)が広すぎて、優先すべき課題に向き合えない
・オンボーディング完了までに時間が多くかかり、顧客のモチベーションが下がる
サービス利用の初期は、ファンを作る最初のステップですので、「ここで失敗するわけにはいかない」と考え込んでしまうでしょう。 ただ、スコープが広すぎると、カスタマーサクセス担当者とユーザー側の担当者とも多くの負担を強いられ、相互に苦しくなっていきます。 スコープを絞らなければ、「本来の目的(課題の解消)」を果たすことが難しくなり、オンボーディングの失敗につながります。
■2.準備不足
「カスタマーサクセス担当者を任されたけれど、何をしたらいいのか分からないので、まず問い合わせ対応に集中している」という方もいらっしゃいますが、これでは一部の顧客にしか接しないという問題が生じます。これでは、問い合わせが多い、もしくは声が大きい(対応に関して圧力をかけてくる)顧客対応が中心となり、顧客全体を能動的にリードするカスタマーサクセスとはかけ離れてしまいます。
カスタマーサクセスの目的のひとつは、LTV最大化です。 顧客全体のライフサイクルを理解し、運用方法の設計をしなければ、LTVの最大化は望めません。
■3.ヘルススコアを鵜呑みにしすぎる
顧客を理解するためには、ヘルススコアがひとつの指標になります。 ただ、ヘルススコアばかりに目を奪われてしまうと、「ある日突然解約の申し出を受けてしまう」という場面に遭遇することがあります。ヘルススコアとは、顧客が継続利用してくれるかどうかを表す指標のことで、「利用状況(ベストな使い方をしているか/チャーンにつながりそうなリスクを示していないか)」を示す用語です。 カスタマーサクセスでは、このヘルススコアにより顧客の状況を判断する場面がありますが、「ヘルススコア算出法が間違っている」「データのチューニングがうまくいっていなかった」といった場合、顧客の状況を見誤ることも少なくありません。
また、カスタマーサクセス担当者側でコントロールできない、担当者やチャンピオン(一番利用しているキーパーソン)の退社/異動といったきっかけの解約もあります。 これは特に、ヘルススコアではなかなか気付けない問題です。 退職や異動はカスタマーサクセス担当者では防ぐことはできませんが、顧客とのコミュニケーションやオンライン名刺情報を定期的に確認しておくことで、解約するまえに他の担当者に引き継ぐことができたかもしれません。
以上から、ヘルススコアだけに頼りすぎるのは注意が必要です。
■4.営業や開発など別部門との関係が希薄
カスタマーサクセスを進める中で、意外な問題となるのが「別部門との関係性」です。 営業担当者は、顧客の課題を解決するため「〇〇ができます」「〇〇と〇〇機能を組み合わせるとより使いやすくなります」と、積極的な提案をしたいものですね。ただ、契約後その提案通りに、うまく実現しなかったとき、顧客は一気にモチベーションを失い、そのまま解約へと突き進んでしまうことがあります。 このような問題は、「営業中に見込み客からこんな相談を受けたけれど、実現できる?」「利用開始時にこんな質問が多いから、営業段階で伝えてもらえる?」のように、営業担当とカスタマーサクセスチームとでうまくコミュニケーションできていれば起こりづらいものです。
また、カスタマーサクセス部門が顧客から受けた要望を開発部門に連携、プロダクトに反映させることで顧客満足度も高まるでしょう。 とはいえ、全ての顧客の声を反映させていてはキリがありませんので、精査することは必要です。
チーム同士の関係が希薄な場合、顧客の抱えるニーズ/問題を共有できない事態を招きます。 結果として、顧客がそのしわ寄せを被ってしまいます。
■5.ツール導入への幻想
「ツールを導入すれば、問題は解決される」と思うのは、よくある失敗のひとつです。 ツールにはそれぞれ独特の機能があり、適した設定や運用が求められます。運用設計を行い、ツールを使って何をしたいのかを明確にしたうえで、「ツールに任せる部分」「カスタマーサクセス担当者が担う部分」を明確にしておきましょう。 確かにツールがすべてを実行してくれるのなら問題はありませんが、ツールによる効果を出せるかどうかは、担当者による使い方で大きく異なります。
また、ツール導入時にも人手が必要です。 ベンダーが設定や運用を代行してくれることもあるでしょう。 ですが、「自社がツールに何を任せたいのか」「解決したい課題は何なのか」の洗い出しや、運用に関してのルールの徹底をしないのであれば、ツール導入そのものに意味はなくなります。
■6.スケールしない取り組み
「スケールしないカスタマーサクセスは、カスタマーサクセスではない」と言われることがあるほど、カスタマーサクセスでは、多くの顧客に成功体験を積んでもらうことが大事で、特定の顧客にばかり対応していては、事業としてはうまくいきません。 もちろん、すべての顧客にきめ細かな対応ができればよいのですが、現実問題としてそういうわけにはいかないでしょう。カスタマーサクセス担当者は多くの顧客への対応をしますし、それぞれの顧客に成功体験を積んでもらう方法はいくつもあります。 それらの作業をすべて行うことはできませんし、大口顧客にばかり時間をかけすぎると、他の顧客に対する対応は手薄になってしまい、ときに多くのユーザーを失ってしまうことにつながります。
システム化や対応範囲の上限設定といったルールが明確でないと、最終的に顧客がバラバラと離れていってしまう環境を作ってしまいます。
|カスタマーサクセスに取り組む上でのポイント
ここまでは、カスタマーサクセスで失敗しやすいポイントを取り上げてきましたが、ここからは実効性の高い重要なポイントを説明します。 貴社での取り組みにすぐにでも取り入れられそうなものもあるはずです。
■目的の明確化
カスタマーサクセスを実行するにあたり、まず決めていただきたいのは「目的」、そして「取り組み」です。考え方はいくつもありますが、多くの場合の目的は次の通りです。 ・定着率向上(解約率低減) ・アップセル/クロスセルの実現
サービスを提供する企業によって、取り組みの手法は違います。 ただ、「まず目的を明確にする」「取り組み方を決める」ことは、とても大切なことです。
■正しいKPIの設置
KPIは、カスタマーサクセスにおいて欠かせない視点です。 ※KPI=Key Performance Indicatorの略。目標の達成度合いをはかる指標カスタマーサクセスをしっかりすすめるうえでのKPIは、「目的を細かく数値に落とし込んだもの」かつ「誤った受け取り方のない目標とKPI」が必要で、その点においてはカスタマーサクセス担当者の取り組み「のみ」が反映された数値が必要です。
というのも、よくカスタマーサクセスのKPIに設定される「解約率」には落とし穴があります。 顧客の解約の原因には「営業時に受けていた提案内容と違った」という、カスタマーサクセス担当者にはコントロールしようのないものが含まれます。
契約までの流れによって、異なりますが、こういったカスタマーサクセス担当者だけでは解決できない数値が含まれるのはKPIとしては適していません このことから、
・2カ月間のオンボーディング完了率
・アップセルで得た金額
・問い合わせ対応状況(回答までに要した時間/日数)
といった、カスタマーサクセス担当者の取り組みに絞ったKPI設置が必要です。
■運用設計を行う
目的+KPIをはっきりさせたのちに運用設計をしましょう。 「対象顧客はだれか」「どんなときに、どんなことをするのか」といったことを決めます。この設計によってムダな動きを最低限に抑えられますので、有限のリソースを最大限に活用できます。 また、きっちりしたルール(設計)があれば、対応内容を振り返ることにも役立ってくれます。
■ヘルススコアの明確化と定期的な見直し
上の運用設計に、「ヘルススコア」という視点を加え、定期的に見直していくこともカスタマーサクセスを実施する面で大切なポイントです。 まず、基本的なヘルススコアの基準を決めます。たとえば、
・顧客のログイン状況が〇〇なら〇ポイント
・広報協力をしてくれたら〇ポイント
・高度な機能を使い始めたら〇ポイント のようにです。
このポイントは事前に決めたものにより「プラス」になることもあれば、「マイナス」となることもあります。 ただ、一律ですべてをポイント化することもよくなく、個別に定性情報を加える必要も出てくるでしょう。
例として、
・ポイントは低下してきているものの、担当者が多忙なだけで取り組み意欲はまだある
といったようにです。
このようなときもまた、スコアリングするルールを決めておき、適宜ポイントを修正します。 さらに、スコアの算出方法も、サービス内容や世情、サービスを利用する顧客層の変化といった条件にあわせるため、定期的にチューニングしなければなりません。
■他部署との定期的な連携の機会を設ける
顧客へのサポートやサービス自体を充実したものにするためには、部署間での連携を密にする必要があるでしょう。 営業担当者の持つ、顧客が問い合わせを行うに至った経緯や顧客の持つ現状の課題の情報は、カスタマーサクセス担当者が理解しておくべき情報で、カスタマーサクセス担当者が持つ、顧客からよく出る質問やツールに対する改善要望、便利な活用方法は営業チームや開発チームにとってとても参考になる情報です。それら情報をチーム間で共有できていれば、各チームの質の向上はもちろん、サービスの質が向上します。 チーム間で定期ミーティングを開いたり、チャットツールで気軽に情報交換したりして、良い関係性を築いておけば、顧客の些細な変化を見逃すことも減りますし、まれに起きる顧客側のアクシデントにも素早く対応できます。
ときに顧客との交流会を設ければ、営業/カスタマーサクセス/開発チーム問わず、「顧客の生の声」をしっかり聞きだすこともできます。
■ツール導入前にはサービスごとの違いを把握
カスタマーサクセスをサポートするツールは近年増えていますが、特徴はそれぞれです。 カスタマーサクセス業務の管理するもの、顧客状況を分析するもの、顧客にアプローチできるもの、コミュニティを活性化させるもの…。貴社の目指すカスタマーサクセス活動や目的、課題、設計にマッチしたツールを選ばなければ、効果を得るどころか「こんなはずではなかった」という状況に直面する可能性が高まります。 カスタマーサクセスツールの導入を検討するときには、それぞれの特徴を理解し、本当に必要な機能を備えたものを選んでください。
|まとめ
カスタマーサクセスに取り組もうとするとき、失敗に陥りがちなポイントと解決のヒントをご紹介しました。 カスタマーサクセスに取り組むために気を付けなければならないことは多くありますが、どうしても避けて通れないことは上記6点に集約されます。
この点をよく知り、それらへの対応策をよく考えるうえで「課題を解消してくれるツール選び」をすれば、カスタマーサクセス業務の精度が格段にあがるうえ、業務自体がラクになります。 もしもカスタマーサクセス業務での疑問が生じたら、この記事を再度読み返してみてください。