ARPU、ARPA、ARPPUとは?SaaSにおける重要性と計算方法

「ARPUは何を表す指標なの?」
「ARPUとARPAの違いが分からない」
このように悩んではいませんか?
ARPUは、企業の業績を評価する指標として、近年SaaSビジネスにおいて注目されている指標です。しかし事業指標はほかにもARPAやARPPUなど似たものが多く、どれをどんなときに使えば良いのか区別が難しいことが特徴です。
そこで今回は、ARPUとARPA、ARPPUの意味と違いを、計算方法も含めて解説します。ARPUを向上させる施策もご紹介しますので「それぞれの違いを理解したうえで正しく使いこなしたい」とお考えの方は、ご参考にしてください。
|ARPU(Average Revenue per User)とは?
まずは、ARPUとは何なのか、定義や計算方法を解説します。
■定義
ARPUとはAverage Revenue per Userを略した言葉で「1ユーザーあたりの平均売上金額」を指し、「アープ」とも呼ばれます。ARPUは、以下の計算式で求めます。
ARPU=MRR(月次経常収益)÷顧客数
もともとARPUは、主に通信キャリアのような、月額課金モデルのビジネスで用いられてきた指標です。近年は、似たビジネスモデルのSaaSでも、企業の業績を評価する指標として注目・活用されるようになりました。
月額課金モデルやSaaSにおいては、事業の売上規模は「顧客数×ARPU」で求められます。しかし日本の人口は減少傾向にあり、多くの市場は飽和して、顧客数を伸ばせなくなりました。そうなると、いかにARPUを向上させるかが、事業成長のカギを握ることになるのです。
■ビジネスモデルによる計算方法

ARPUは、ビジネスモデルによって、少しずつ異なります。ここではビジネスモデルごとのARPUの計算方法を紹介します。
ユーザー課金モデル
課金モデルを採用しているビジネスでのARPUは、ARPPU(Average Revenue per Paid User=課金ユーザー1人あたりの平均収益)にPUR(Paid User Rate=課金ユーザー率)を掛けて求めます。
・ARPU=ARPPU×PUR
インプレッション単価モデル
広告のインプレッションを収入源とするビジネスでは、ユーザー1人あたりのEngagement(エンゲージメント=消費者と企業間の「つながり」を表し、アプリビジネスにおいては「起動頻度」「滞在時間」などから総合的に計測したもの)に、CPM÷1,000(Cost per Mille=広告表示1回あたりの費用)を掛けて求めます。
・ARPU=Engagement×(CPM÷1,000)
クリック単価の広告モデル
クリック単価を収入源とする広告モデルでは、ARPUはCPC(Cost per Click=広告1クリックあたりで発生する売上)にCTR(Click Through Rate)を掛けて求めます。
・ARPU=CPC×CTR
|ARPAとは?
ARPAとは、Average Revenue per Accountを略した言葉で、1アカウントあたりの平均売上を指す言葉です。主にBtoBのSaaSビジネスにおいて、ARPUの代わりに用いられる指標で、以下の計算式を用います。
・ARPA=MRR(月次形状収益)÷アカウント数
BtoBにおいては、1 User(=1ユーザー)あたりの収益ではなく、Account(=1アカウント)あたりの収益を計測する必要があります。たとえば提供しているサービスを、A社が3ユーザー数、B社が5ユーザー数で契約している場合、アカウント数は2であり、ユーザー数は8になります。
この場合、ARPUはA社もB社も数値が同じになるため、評価指標にするには不適切です。そのためBtoBにおいては、1ユーザーではなく1アカウントあたりの収益を指標にします。
なお、Accountの代わりにCustomerを示す「ARPC」が用いられることもありますが、同義と考えて問題ありません。
|ARPPUとは?
ARPPUとは、Average Revenue per Paid Userを略した言葉で、有料ユーザー1人あたりの平均課金額を示す指標です。
近年はフリーミアムモデルを採用するサービスが増えていることから、非課金ユーザーと課金ユーザーを区別することが必要になってきました。そのためARPPUも重要な指標として注目されるようになりました。
ARPPUは、以下の計算式で求めます。
・ARPPU=MRR(月次経常収益)÷有料顧客数
ARPUがすべての顧客に対する平均売上金額であるのに対し、ARPPUは有料顧客のみを対象としている点が異なります。
|ARPUを向上させる施策
解説してきたとおり、ARPUの計算式はビジネスモデルによって異なることから、ARPUを向上させるためには自社が採用しているビジネスモデルに応じた施策を立てなければなりません。
その一方、ARPUを向上させるには、ユーザーや顧客企業に製品やサービスを気に入ってもらい「もっと使いたい」と思ってもらう必要がある点は、どのビジネスモデルでも同じです。そのため以下の3つの施策は、すべてのビジネスモデルにも通じる「ARPUを向上させる普遍的な施策」といえます。
・NPS®を測定し向上させる
・顧客ロイヤルティを高める
・アップセル・クロスセルを増やす
具体的にどのような内容かを解説します。
■NPS®を測定し向上させる
ARPUを向上させるには、まずはそもそもユーザーや顧客企業が現時点でどの程度自社の製品やサービスを気に入り、満足しているか、つまり「顧客ロイヤルティ」を知る必要があります。
目には見えない顧客ロイヤルティを数値化するには、NPS®(Net Promoter Score=ネット・プロモーター・スコア)を活用します。NPS®では「商品やサービスを友人や同僚にすすめる可能性」を、顧客に0〜10点で回答してもらうことで、顧客ロイヤルティを可視化できます。
まずは現状を把握するために、ユーザーや顧客企業に対してNPS®のアンケート調査を実施し、現時点の顧客ロイヤルティを測定しましょう。
NPS®について詳しくは、以下の記事をご覧ください。
【事例あり】NPS®とは?顧客満足度より業績向上に繋がる指標を解説
NPS®について事例を踏まえて詳しく解説するとともに、顧客満足度調査との違いについても詳しく解説しています。「NPS®の活用方法がよくわからない」という方でも、読み終える頃には具体的なアクションを踏むことができるようになっているでしょう。
【実践編】NPS®向上目的のPDCA回し方:企画~改善までのプロセス解説
NPS®を向上させるためのPDCAの回し方を、事例とともに解説しています。「基礎は理解できたけど、実際にどうすすべれば良い?」とお悩みの担当者は、本記事を読むことで具体的なステップを踏むことができます。
■顧客ロイヤルティを高める
NPS®で顧客ロイヤルティを可視化したら、数値を向上させる施策を立てて実行しましょう。
具体的には、まずは売上に貢献しているにも関わらず、NPS®で低い数値を示した顧客を洗い出し、優先的に取り組みます。そのような状態にある顧客は、ほかに良い商品やサービスが見つかると、簡単にそちらに移ってしまう可能性があるためです。自社の商品やサービスのどのような点に満足していないのか原因をさぐり、改善に努めます。
顧客ロイヤルティを高めるためには、ほかにも顧客と積極的にコミュニケーションを取る、ロイヤルティプログラムで優越感を与えるといった方法があります。
しかし根本的な対策としては、商品やサービスを通しての「成功体験」や「感動体験」をしてもらい、心理的な満足度を高めることが大切です。顧客ロイヤルティを向上させるためにできることを検討し、組織全体で取り組む必要があるでしょう。
顧客ロイヤルティについて詳しくは、以下の記事をご覧ください。
【図・具体例あり】ロイヤルカスタマーとは?定義、類語と創出方法を紹介
ロイヤルカスタマーの定義やビジネスにおける重要性、育成方法まで詳しく解説。現在の市場環境におけるビジネスの成長に欠かせない概念です。読み終える頃には、ロイヤルカスタマーの概念を自社で導入するための必要知識が得られるでしょう。
■アップセル・クロスセルを増やす
アップセル・クロスセルを増やすと顧客単価が上がるため、ARPUを向上させることにもつながります。
アップセルとは、既存顧客に今よりも上位のプランへの乗り換えや、オプションの購入を促すことで収益を増やす手法です。対してクロスセルは、顧客が現在利用中の商品やサービスと組み合わせることでより効果的に使えるものを、あわせて購入してもらうことを指します。
ただしアップセル・クロスセルは、顧客ロイヤルティが高まっていることが前提で行う施策である点には注意が必要です。ARPUを向上させる目的で、顧客ロイヤルティが低い状態の顧客に対してアップセル・クロスセルを提案しても、かえって反感を招きかねません。
アップセル・クロスセルを仕掛けるときには、自社の都合ではなく、あくまでも「顧客により良いUXと成功体験を提供するため」であることが重要です。
アップセル・クロスセルについて詳しくは、以下の記事をご覧ください。
アップセルとは?カスタマーサクセスで再注目される概念や実現のポイント
カスタマーサクセスを実施するとき、「アップセル」の具体的な方法について悩んでいませんか?アップセル、クロスセル、ダウンセルをうまくサービスに組み込むことは、顧客にとっても貴社にとってもかなり有益です。本記事では、アップセルについて解説します。
※ネット・プロモーター、ネット・プロモーター・システム、NPS®、そしてNPS®関連で使用されている顔文字は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの登録商標またはサービスマークです。